『ヤクの糸をクルミ染めしてみよう』と、脈絡のない思いつき。
半年くらい前に染料店に出かけた折に、染めるあてもないのに思わず買ってしまったクルミの染材が、ひっそりと棚の奥に眠っているのをふと思い出した。
この脈絡のない思いつきは、『高野豆腐を炊いてみよう』と食品棚に眠っている高野豆腐のことをふと思い出して、作ってみたくなるのと似ている。
さて、私が買ったクルミの染材は、食べるクルミが入っている硬い皮を乾燥させたもので、これを煮だして染液をとり、その染液で糸や布を茶系色に染めることができるというもの。
これまでにいろんな草木染めをしたけれど、クルミは食べる専門で『クルミ染め』は初めて。染色のデータも持っていないし、どんな色に染まるのかもわからない。だけれども、どんな色に染まろうがそれはそれなりに。なんて、とてもおおらかな気持ちになれるのも大好きなクルミなればこそ。
そんなおおらかな気持ちで糸を染めていると、クルミの木を初めて見たときの驚きを思い出した。
クルミの実は薄緑色の皮をかぶった状態で木になっている。と知ったのは学生時代に所属していたサークルの合宿で出かけた兵庫県城崎でのこと。サークルの先輩が木にたわわに実っている緑色の実を指差して、それがクルミの実だと教えてくれた。
『ええっ、そうだったんだー!』とは、クルミ好きのクルミ知らず。
クルミは紀元前7000年頃から食用されている木の実だそうで、ビタミンやミネラルも豊富。リノール酸やリノレン酸などの不飽和脂肪酸がコレステロールを下げるとか。それよりも何よりも、とにかく美味しいものね。そのままポリポリ食べても、パンに入っていても、お菓子に入っていても。
ともあれ、懐かしい思い出をくりながらクルミの皮で染めたヤクの糸は、今までに染めたことのない、薄茶色に染まった。
和名で言えば『朽葉色(くちばいろ)』っぽく、フランスの伝統色で言うならば『ヌガー』に近い感じの色。もっとも似ているのは、私が毎朝飲んでいる『ミルクティー』の色かな。
ふふふ。心も体もほんわかと温まりそうな、優しく柔らかな色合いだ。
食べて美味しいクルミ。美味しそうな色合いに染まるクルミ(笑)。この度は、染料としてのクルミの魅力も発見して、ますます大好きになった。
このクルミには『いざというときに勇気が出て、能力を発揮させる魔力がある』そんな言い伝えがあるそうだ。
2月1日より開催の「ヤクのストール展」にこのクルミ染めのストールを出品できるように、いざ仕事!クルミをたっぷりと食べて仕事に取りかかりましょう。