ヤクの魅力を引き出すものは・・・

1枚目のヤクの毛のストールが織りあがった。房の始末をして肩にかけてみる。
ふむふむ好い感じ。思わく通りの織りあがりになっている。
それでは、仕上げの縮絨(しゅくじゅう)へ歩を進めましょう。と、ストールを洗剤液に浸して押し洗いをし、すすぎ乾かした。

洗剤とお湯で布を縮める縮絨は、生地の毛を絡ませて織地を安定させると共に、繊維をふっくらと膨張させて柔らかさを引き出すための作業で、毛織物には欠かせない仕上げの工程。ストールの風合や使い心地の良さを左右するとても大切な作業だ。

縮絨したストールは、ざらりとした硬さが取れて、さらりとした柔らかな風合いへと変化している。早速、試着調査をと、冷房を効かせた部屋で纏ってみた。
「柔らかくはなったものの、ウブな硬さが残っているなあ。縮絨で、もっと柔らかくなるはずだ」
と思いながら、その手触りと羽織りごこちを、自分が使っているヤクのストールと比べていたら、ひょっこり夫が顔を出した。
そして「まだまだっぽいね」という一言を残して去っていった。

3年使ったヤクのストールは、使い始めた時よりも柔らかくしっとりとした手触りになり、今や、たたみジワも残らない。
使えば減っていくのが普通で、使えば使うほど増えるものはそう多くはない。

使うほどに良さが増していくヤクのストールは、なんとも魅力的だ。
出来立てホヤホヤのストールを「まだまだっぽい」と表現した夫の言葉は、言い得て妙。

ともあれ、1枚目のストールの更なる縮絨は必須の作業。ここで一気に完成まで突き進んで行きたいところだが、ちょっと待て。と一息入れた。
はやる気持ちをぐっとこらえて、仕上げの縮絨はまた後日にしよう。
制作最後の押さえどころは、腰を据えて取りかかるのがきっと佳いに違いない。急がば回れ。
それでは2枚目のストールに駒を進めよう。さて、1枚目の制作で得た感覚をどのように繋いでいこうかな。

 

関連記事

  1. abaka糸を整経

    のどもと過ぎれば

  2. ラクダの毛を紡ぐ湿潤な昼下がり

  3. もの想いー葡萄のグリーンカーテン

  4. 2本の細い糸を縒りあわせる

    糸撚り作業はテンポが大事

  5. 雨が繋いだアバカの糸で・・・

  6. ヤクの糸とヤクの糸で織ったショール

    ヤクのストールを織りだす前に

  7. 夕暮れに 光る織り布 夏の影

  8. アフガニスタンの手紡ぎ糸

PAGE TOP