abaka糸を整経

のどもと過ぎれば

暑さは忘れられる。涼しくなるとね。熱さも忘れられる。火傷の傷が癒えるとね。苦労も同様に。
のどもと過ぎて忘れちゃいけないことはたくさんある。それを上手に忘れて、できるだけ幸せに生きていたいものだけど。

友人宅に嫁入りしていた暖簾を久しぶりに見て、手元に残ってるその糸を使って間仕切りを織ってみようと思った。6年前の苦労を9割がた忘れた頃でもあったし、1割がた記憶にある苦労は工夫次第でなんとかなるだろうと思った。

箱の底から引っ張り出したその糸は、ハリハリとしていて妖しい魅力で光っていた。
「ゆるやかに、慎重に」をモットーにおつあいを始めたものの想定以上の裏切り続き。

絡む、もつれる、切れる。糸口は行方不明。(解決の糸口が見つからない。というたとえは、本当にうまく言ったものです。)
相手が人ならばすぐに縁を切るゾと腹を括るところだけれど一旦見初めた糸だもの。そうそう諦めるわけにはいかない

切れそうな心を繋ぎつつ、切れた糸を結ぶ。ちっ!と舌打ちをした後は『ゆるやかにゆるやかに』と呪文を唱えつつ結ぶ。もう二度とやらないぜと思いながらムスブ。そういえば11月の展覧会の会場の名前は『結い村』だったなあ。と笑いながら結ぶ。

そうして漸く、細い糸を捻りあわせた経糸の準備が整った。

心地よい秋の陽射しの中にいると、暑さ地獄の工房での結ぶ作業も夢の中の出来事みたいだ。のどもと過ぎれば暑さ忘れる。

苦労の数だけよいものができるとは限らないのが辛いところだけれど、いとおしいと思えるものに仕上がると嬉しい。それにしても、アバカという糸、つわものだなあ。

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