フェルトの鍋つかみ

我が家の台所には、形やサイズ、素材が異なる鍋つかみが数枚吊されている。フライパンに鍋、そしてケトルなど、鍋つかみが必要な調理道具をよく使う台所しごとには、マストアイテムの鍋つかみ。
木綿や麻の素材、フェルトのものなどランダムに並んだ鍋つかみを、手当たり次第で手に取る私。だが、夫はフェルトの鍋つかみを必ず最初に手に取る。

そのフェルトの鍋つかみは、親指と残りの4本の指が二手に分かれて突っ込める、ポケットがついている。
「下がっている鍋つかみに手がスッと入れられる。指先が覆われて手のひらにフィットするし、指先が火傷することもない。」というのが夫のお気に入りの理由だ。
夫の他にも、この鍋つかみを気に入ってくださった方のご要望があって、久しぶりに制作することになった。

我が家で使っているものは、指折り数えてみると、かれこれ13年前に作ったもの。長いこと働いているなあ。としげしげと眺めてみると、指の圧力がかかる部分だけが、薄くなってのびている。
『戦後、女と靴下は強くなった』とは一昔前に流行ったフレーズだけれど、強くなった靴下といえども、履き続ければ薄くなり破れてくる。鍋つかみも靴下と一緒だなあ。これは致し方なし。などと思いながらも、その傷みがちな部分をあらかじめ補強しておく手立てはないかと考えてみた。
そして、思いついたいくつかの候補の中から、革を縫いつける方法を選んだ。
扱い慣れない素材に手を出すのはちょっとハードルが高いけれど、革がついた鍋つかみの姿を想像すると、それ以外の補強作戦はなんだか色褪せて見えた。
そこで、革作家の友人にお願いして、革の準備と革の縫い方の手ほどきをしてもらった
そして、ひと針、ひと針、チクチク、チクチク

フェルトと革のコンビネーションは新しい試みだけれど、きっとフェルトの鍋つかみは、革という新しい戦友と共にさらに長く働いてくれるだろう。
我が家の13年選手にも革のプロテクターをつけてあげよう。まだまだ、働いていただきましょうかね。チクチク作業は続く。。。

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