旅先でご当地のお塩に出会えるのは私の旅の楽しみの一つ。今回はご当地塩ではないけれど、2020年2 月1日より13日まで開催していた名古屋での展覧会『清水久勝・まゆみ展ー木の道具とヤクのストール』のために出かけた旅で出会った3つのお塩のお話を。
1.ゲランドの塩『海の果実』
愛知県美術館で出会ったフランスのお塩。
展覧会の飾りつけが早めに終了し、金曜日は20:00まで開催している「コートールド美術館展 魅惑の印象派展」に出かけた。
ナイトミュージアムは、鑑賞者も多くはなく落ち着いた雰囲気。展覧会はとても素晴らしいもので、絵画や彫刻をじっくりと鑑賞した。そして巨匠の作品に唯々感動しながら行き着いた展覧会のグッズ販売コーナー。
そこには、おきまりのポストカードやポスターの他にも様々なグッズが並んでいた。
フランスのワインにイギリスのショートブレッドと紅茶。イギリスのマルドンの塩にフランスのゲランドの塩などなど。このような品揃えは初めてで驚いてしまった。
そこで、未だ使ったことがないゲランドの塩『海の果実』をピックアップ。
ゲランドの塩はフランスブルターニュ半島南部のゲランドの塩田で海水から作られる塩。塩田の海水が結晶化する夏の間に熟練の塩職人によって収穫される。
手に入れた海の果実(フリュードメール)という塩は、塩田の表面に最初に結晶化して浮く白い結晶を『水面に浮かぶ花びらを摘むように』手作業で収穫したものだそう。
百貨店やネットショップでも購入できるものではあるけれど、このお塩と一緒に美術館での感動を持ち帰り、その感動を塩と共に味わうのもオツなもの。寄り添うようにふんわりと固まった塩の粒は、その名の通り『海から生まれた小さな果実』のよう。
2.平戸の塩『海の子』
所用あって名古屋から信州上田に足を運んだ折にパン屋さんで見つけたお塩。
この『海の子』は長崎県平戸市で今井弥彦さんが作っているお塩。今井さんに出会ってからというもの、彼の塩職人としての生き方に惚れ『海の子』を平戸に買いに出かけている。信州上田でまさか「海の子」に出会うとは!
我が家の常備塩としてたっぷり手持ちがあるので、塩は買わずに、海の子を使って焼いたパンをひと抱え買って帰った。
さてこのパン屋さん。天然酵母パンの先駆的存在の幸田幹夫さんが、東京富ヶ谷店に続き、故郷である長野県上田市に2004年に開店した「ルヴァン」というパン屋さん。
契約農家から仕入れた国産小麦粉を石臼で挽いた全粒粉と自家製酵母を使って焼き上げ、合わせる食材は自然で身体に優しい国産・地元産を仕入れているそうです。
その中に今井さんのお塩があるのは、『海の子』のファンとしてはとても嬉しいのでした。言うに及ばずですが、とてもとても美味いパンでした。
3.ギャラリーで出会ったお塩
『手塩にかけてくださいね』
展覧会で作品を求めていただいたお客様に、オーナーがこの言葉を添えて作品を手渡してくださった。
手塩にかけるとは、みずからいろいろと世話をして大切に育てると言う意味。
この言葉を添えて、自分たちの作品を手渡していただけるなんて。なんとありがたいことか。
『手塩にかけたい』と思っていただけるような作品を作らねば。と肝に命じた、お塩にまつわる言葉との出会い。
ギャラリーで出会ったお塩は、味わい深く、そして心に沁みわたった。ありがとうございます。