一瞬私に問われたのかと思った。
だが、それは小学校6年生の息子への質問だった。
「一流の人ってどんな人だと思う?」
ややあって、首をかしげる息子を見ながらヴァイオリンの先生はこう仰った。
「今できることを 常に できるだけ上等に やりつづけている人 を一流の人だと、私は思っているのよ。」
一流の定義って色々あるのだとは思うけど、先生の定義に心をグッと掴まれた。
音楽をやっているからとか、ものをつくる仕事をしているからではなく、ただそういう生き方をしたいなあと思った。そういう一流を生きたいなあと思った。
そう思った割には、すっかり忘れてしまって13年を過ごしてきた。しまったなあ。
しまったなあと思うなら、残された人生を、そうやって生きていけばいい。私は私の「上等」を自分で磨いていけばいい。
あの時のことを思い出しながら、パツンパツンと切れる糸を眺めていた。
そう、やるしかないね。