一本の糸から

来年2月の展覧会に向けて、ブランケットタイプのヤクのストール制作が進み、マフラータイプのものを織る作業が射程に入ってきた。
どんなマフラーにしようかと考えながら眠りについたら、まだ暗いうちにパッチリと目が覚めてしまった。ならば、とベッドを出て工房で考えることにした。

今までに織り上げたストールを参考に、マフラーのサイズや織り地の厚みなどを検討しているうちに空が白み始め、一羽の鳥が声と羽音を立てると、工房を囲む木を寝ぐらにしている鳥たちも、目を覚ましてムズムズと動き出した。

「何かが動き始める気配はいいなあ」と思いながら、ミルクティーでひと息入れていると、窓から朝の光が入ってきた。

 

 

『見てごらん』誰かからそう囁かれたみたいで、織り機にふと目を向けると一本の糸が朝日に照らされていた。

ああ。糸からできているんだ。
私が着ているシャツもジーンズも。そしてこのストールも。

なんだかスゴイ事実を発見をしたみたいだった。
そしてその垂れ下がった糸を眺めていると、今まで絡んでいた考えがするするとほどけていった。

『木を見て森を見ず』ならず『布を見て糸を見ず』か。
出来上がりの布のことばかりを考えていたのだけれど、元々は、この一本の糸が出発点だよね。
そう思ったらすっきりと目が覚めたみたいで、男の人がヤクのマフラーを首に巻いている姿が頭に浮かんだ。フムフム見えてきたぞ。どうやらマフラー作りにも朝がやって来たようだ。

見えない何かから応援していただいたような、ありがたい気持ちになった朝。
早起きは三文の徳。はやおき鳥よりも早く起き出して、六文の徳をいただいちゃった。

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